
ロバート・ラドラム原作の「暗殺者」、「ボーンシリーズ」の1作目を、ダグ・リーマン監督が映画化。さて、そのあらすじは・・・
その男は背中に銃弾を複数うけており、おしりにはチューリッヒ銀行の口座が記録されたチップを埋め込んでいたうえ、記憶を失っているという状況だった。
寄港し、スイスに向かったその男は、雪の降る中、公園のベンチで眠っているところを2人の警察官に尋問される。不審者と思われ、拘束されそうになったところ、一瞬のうちに警察官を倒してしまった自分に驚く。
その翌朝、チューリッヒ銀行に向かい、貸し金庫の中身を確認してみると、腕時計、クレジットカード、パスポートなどが入っていた。パスポートから、自分の名前は「ジェイソン・ボーン」だと判明するが、その他にも複数のパスポートや拳銃、各国の現金などが入っていたことで、困惑することになる。
実は彼はCIAのスパイで、何かの作戦のためにフランスに居住していたのだった。そして、その時から何者かに狙われるようになっていく。ボーンは自分の記憶を取り戻し、襲いかかる敵から身を守ることができるのか?・・・というストーリー。2002年ユニバーサル作品。1時間58分。
ボーンアイデンティティーを見た感想
この作品は、公開されたときにロードショーを見に行ったのですが、そのアクションの素晴らしさや、内容の面白さにグイグイ引きこまれたことを今でも覚えています。
そして、こうやって、10年以上ぶりに見た今も、当時の興奮をリアルに思い出してしまいましたね。この10数年の間に、いろいろなアクション映画を見てきましたが、どんな作品にも負けていない内容の濃さだと再確認しました。
ストーリー展開も面白いですし、スタントの凄さも際立っていますから、スパイもののアクション映画としては、見応え充分なんですよね。
それまでは、マット・デイモンの出演作品は、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」と「オーシャンズ11」くらいしか見たことがなかったんですが、当作品以降は、その動向を絶えずチェックする俳優のひとりになりました。
私の中では、マット・デイモンの代表作といえば「ボーンシリーズ」と思っているくらい、重要な作品になっています。
この後も、「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」とシリーズが続きますが、抑えておくべきアクション映画であることは間違いないでしょう。個人的には「007シリーズ」と双璧をなすスパイ映画だと感じているので、まだ見たことがない人は、可哀想としか言いようがありません。
子供から大人まで楽しめること請け合いなので、ぜひ多くの人に見て欲しいと思いますね。ボーンの部屋にある電話がパナソニック製ということなども含めて、きっと楽しめるはずです。
ボーンアイデンティティーの主演女優
この作品には、キーとなる女性キャストは二人しかいないんですよね。
一人は、CIAのスタッフであるニコレット"ニッキー"・パーソンズを演じるジュリア・スタイルズ。
そして、もうひとりがジェイソン・ボーンと行動を共にする、準主役と言っても過言ではない、マリー・H・クルーツを演じるフランカ・ポテンテです。
この女性、私の小中の同級生の女の子にすごく似ていて、見る度に彼女を思い出させてくれるんですよね。ドイツ人と日本人が似てるっていうのも、何か不思議な話です。
作品中で、本当に自分の髪の毛を切るなど、演技にかける気合が感じられて、非常に好感がもてたのもよかったですね。
ボーンアイデンティティーのネタバレ
地中海での漁を行っている船が、波間に浮かんでいる男を見つけ、船に引き上げた。死んでいると思われたその男はまだ生きていたが、背中に銃弾を受け、ひどく衰弱していた。
ジャンカルロ船長(オルソ・マリア・グェリニ)が、彼の背中から複数の銃弾を取り出し、治療を行っていると、おしりに何かが埋め込まれているのを発見、取り出してみた。
それはチップのようなもので、赤い光を発しており、壁に光を当ててみると「チュリーッヒ相互銀行」の文字と口座番号が映し出された。
突然起き上がり、ジャンカルロに襲いかかる男。彼は、自分の名前さえ覚えていない記憶喪失になっていた。ジャンカルロは、興奮した彼をなんとかなだめ、休息をとるようにすすめ、再びベッドへと寝かしつけた。
2週間たっても彼の記憶は戻らなかったが、体力はすっかり回復し、船は港に上陸した。ジャンカルロにお金をもらった男は、列車でスイスに向かう。
スイスに到着した彼は、雪が降っているにも関わらず、公園のベンチで寝ていた。すると、警察官から尋問を受けた。英語ではない言葉で話しかけられたのに、スムースな会話ができるばかりか、不審者だと思われ、拘束されそうになったのを一瞬で警察官を叩きのめした自分に驚く男。
その場を離れ、翌朝、チューリッヒ銀行が開くと同時に、中に入り指紋認証をパスし、貸し金庫の中身を確認していく。
その中には、腕時計、パスポート、クレジットカードなどが入っており、そのパスポートを見ると、自分の写真と「ジェイソン・ボーン」という名前があり、ニューヨーク出身でパリ在住ということが判明した。
ところが、その他にも複数のパスポートや、拳銃、各国の紙幣などが保管されており、ひとつのパスポートには「ジョン・マイケル・ケイン」という名前が記されていた。
お金だけを取り出し、ほかは元のケースに戻し、銀行を出るボーン。それを見ていた銀行のスタッフが、どこかに電話をかけた。そして、電話を掛けた先は、アメリカのCIAであった。
電話番号案内で、パリでの自分の自宅の電話番号が「4699-0384」だと知ったボーン。その後、雪の降る街中を歩き出すが、何者らかに尾行されていることに気づき、領事館へと逃げこむ。
そこで、窓口でもめているマリー・クルーツという女性を見かける。不穏な空気を察知したボーンは、並んでいた列から離れ移動するが、警察官に呼び止められる。拘束されそうになったところを回避し、館内地図を手に入れ、途中で倒した警察官から無線を奪い、外壁に設置されたはしごで外へ逃げることに成功する。
ボーンの拘束に失敗したことを、銀行に忍び込んでいたCIAの工作員が上司に連絡。その上司はアレクサンダー・コンクリン(クリス・クーパー)であり、「トレッドストーン作戦」の指揮官だった。
コンクリンは、その報告を受け、「死んでいてくれればよかった」と吐き捨てた。
路上駐車しているミニクーパー。それは、領事館の窓口でもめていたマリー・クルーツの車だった。ボーンは彼女に近づき、「1万ドルでパリまで送ってくれ。到着したら、さらに1万ドル支払う」と交渉する。
ビザが降りずに困っているマリーにとっては大金であり、ボーンにとっても、追手から逃げ切れるというメリットがある交渉だった。マリーはそれを受け入れ、ふたりはパリへと向かう。
その頃、CIAでは街中の防犯カメラの映像でボーンを確認。総動員で彼の抹殺作戦を開始する。招集された工作員は、バルセロナの「教授」、ハンブルグの「マンハイム」、ローマの「カステル」などだった。
ボーンは車の中で、マリーに自分が記憶喪失になっていることを打ち明ける。その後、休憩にはいったドライブインでも、自分の能力について話すが、マリーは思い過ごしだと返答する。
それに返す刀で、ボーンはさらに答えた。
- 店では出入りの見える席に座り、逃げ道を頭にいれる
- 表の車の6台のナンバーを言える
- ウェートレスは左利き
- カウンターの男は体重98キロで、技がある
- あそこのトラックの運転席には銃がある
- この高度なら、自分は800メートルを全速力で走れる
翌朝、パリに到着し、目的地の104番地を行き過ぎて車を止め、ふたりで部屋へと向かう。鍵を持っていなかったが、管理人の女性がボーンに声をかけてきて、部屋にはいることが出来た。
机の上の電話をリダイアルしてみるボーン。すると、パリのホテル・レジーナにつながった。自分の名前を出し、宿泊しているかどうか確認するが、そのような客は泊まっていないという。
ふと思いついて、パスポートにあった名前「ジョン・マイケル・ケイン」の名前を出してみると、その客は宿泊していたが、2週間前に高速道路の事故で亡くなったとスタッフ。その話は、ケインの弟から伝えられたと答えた。
電話をきったあと、違和感を感じるボーン。次の瞬間、窓ガラスをけやぶって、工作員が侵入してきた。激しい攻防のあと、抑えこむことに成功、いくつかの質問をするが、マリーが彼の持っていた自分の顔写真入りの資料をみて、取り乱してしまう。ボーンがマリーをなだめている間に、侵入してきた男は窓から飛び降り命をたってしまった。
マリーを連れて部屋を出るボーン。ボロボロのミニクーパーで警察の追跡をかわし、パリの街を逃走する。地下パーキングに逃げ込み、車を捨てたあと、身を隠すためにマリーの髪の毛を切り、黒く染める。
ボーンがCIAに追われているのは、とある国の政治家、ウォンボシ(アドウェール・アキノエ・アグバエ)の暗殺に失敗したことが原因だった。
その実行犯、「ジョン・マイケル・ケイン」は死亡したことになっているのだが、ウォンボシはそれを信じていない。
生き延びたウォンボシは、CIAの暴露本を出版すると息巻いているうえ、自分を船の上で襲った「ジョン・マイケル・ケイン」の遺体が本物なのかどうかを、パリの死体保管所まで確認にやってきていた。
そして、その死体が別人のものだと気付き自宅へと戻るのだが、他のCIA工作員により、狙撃され死亡する。
ボーンとマリーはホテル・レジーナへ向かう。目的は、自分が宿泊した領収書のコピーなどを入手するためだ。
マリーがその実行役を行うため、予め細かく打ち合わせをする。
- お互いの時計をあわせる
- 公衆電話の番号「616-2486」を記憶する
- 出口が全部で3つあることを確認
- 尾行されたら、バッグを右肩にかける
- タクシーがいなければまっすぐに歩き続ける
ところが、そんな綿密な打ち合わせは必要なく、フロント男性に「ケインさんの秘書です」と伝えただけで、あっさりと領収書のコピーを手に入れて戻ってきたマリー。彼女にボーンは、拍子抜けしたように、「うん、よい方法だったね」と答えるのだった。
CIAの内部では、トレッドストーン作戦の指揮官であるコンクリンが、責任者であるワード・アボット(ブライアン・コックス)への報告を怠ったり、ごまかしたりしている。
先日ウォンボシを暗殺したのも、自分が用意した工作員ではなく、ボーンが行ったことだと嘘をつき、さらに、「任務を終えた工作員は24時間以内に戻ってくるものです」と、とぼけた返答をする。
そんなコンクリンの態度に何かを感じ取ったアボットは、保身のために何か手を打つべきだと考え始めているようだ。
一方、ボーンは自分が関わっていた作戦のプロセスを、ひとつづつ確認していく作業を行っている。その流れの中で、自分自身でもある「ジョン・マイケル・ケイン」の遺体を確認しに行った。
そこで、遺体閲覧者名簿からウォンボシの名前を発見し、彼に会いに行くが時すでに遅し、彼は殺されたあとだった。過去の新聞から、自分は殺し屋だと知ったボーンは、タクシーで宿泊しているホテルへ戻るが、警察の動きを察知してホテルから離れる。
車を盗み、マリーの元カレの家へと移動する。空き家だと思っていたのだが、そこに元カレのイーモン(ティム・ダットン)は家族で住んでおり、一晩だけ泊めてもらうことにする。
翌朝、出発しようとしているときに、飼い犬のガイがいなくなったと子どもたちが言う。工作員にここを嗅ぎつけられたことを感じたボーンは、イーモンたちを地下室に隠れるように指示し、工作員と戦う。
工作員を始末したあと、マリーにほとんどの金を渡し、イーモンと一緒に逃したあと、携帯電話のリダイヤルでCIAのコンクリンとコンタクトをとり、パリで待ち合わせする約束をとりつける。
ひとりで来るように指示したにもかかわらず、スタッフを引き連れてきたコンクリン。それを遠くから確認したボーンは、会う約束は無効だと伝え、彼らの車に発信機をつけてからその場を離れた。
発信機を元に、トレッドストーン作戦のパリ支部の場所を突き止めたボーン。そこでコンクリンに銃をつきつけ、「ジェイソン・ボーンは死んだ。もう俺を追いかけるな」と告げるのだが、コンクリンの話によって、自分が行った作戦の全てを思い出したのだった。
ここからラストに向けて、アメリカ政府が3000万ドルかけて作り上げた、ジェイソン・ボーンという人間兵器も、人の心を失っていなかったという描写が描かれていきます。
人間はマシーンにはなりきれないし、そういう人間が最高のスパイになり得るのだという、ある意味逆説的な問題を提示した秀逸な演出であり、人間同士のふれあいがなければ生きていけないという、ひとつの教訓を示しだすラストシーンは、心をぐっと打ってくれますよ。
ジェイソンボーンシリーズ
- ボーン・アイデンティティー
- ボーン・スプレマシー
- ボーン・アルティメイタム
- ボーン・レガシー
- ジェイソン・ボーン